年齢を重ねてからの性生活に不安や戸惑いを感じている60代のご夫婦は珍しくありません。
「他の家庭はどれくらい?」と頻度の基準が分からず悩む方も多く、放置するとすれ違いや孤立につながることがあります。
この記事では平均回数やセックスレス率、性別差や同居・健康状態別の実態をデータで整理し、主な原因と対処法を明確に示します。
運動や睡眠、医療相談、日常の工夫や話し合いの進め方まで、実践しやすい具体策をわかりやすく紹介します。
まずは実態を把握してから、自分たちに合った対策を一緒に見つけていきましょう。
60代夫婦の頻度実態
60代の夫婦の性生活は個人差が大きく、単純に「減った」とは言い切れません。
ただし、全体としては若い世代に比べて回数が減り、形を変えた親密さが増えている傾向があります。
平均回数(週)
一般的に60代の平均的な性交頻度は週あたりごくわずかです。
多くの調査で週に0.1回から0.7回程度という幅が報告されており、週に数回あれば多い方に入ります。
週単位では変動が大きく、体調や外出予定によってばらつきが出やすい点に留意してください。
平均回数(月)
月単位で見ると、平均は数回から十数回の幅に分布します。
| 年齢層 | 平均回数 月 |
|---|---|
| 60〜64歳 | 4〜6回 |
| 65〜69歳 | 2〜4回 |
| 70歳以上 | 1〜2回 |
表はあくまで目安で、個人差やパートナーとの関係性で上下します。
生活リズムや健康状態によって月ごとの変動がかなり大きくなるのが実情です。
セックスレス率
60代はセックスレスの割合が高くなる年代です。
定義にもよりますが、性生活が1年以上ない夫婦をセックスレスとすると、割合は数割から半数以上に上る調査もあります。
理由は身体的要因のほか、心理的な距離や生活習慣の変化が重なることによる点が大きいです。
性別差
性別による違いは明確で、男性は勃起機能の低下で悩むことが多く、女性は更年期に伴う性欲の変化が影響します。
意欲の面では男性の方が「回数を望む」傾向が残ることが多く、女性は痛みや乾燥など身体的負担で消極的になる場合があります。
ただし、個人差は大きく、双方ともに性的関心が高いペアも存在します。
同居状態別
同居の形態は性生活に影響を与えやすい要素です。
- 夫婦二人暮らし
- 子世帯と同居
- 親世帯で介護がある同居
- 単身赴任や別居
一般にプライバシーが確保されにくい同居形態では頻度が下がりやすく、夫婦二人だけの生活や別居がプライバシー面で有利になる場合が多いです。
健康状態別
持病や薬の種類は性生活に直接的な影響を及ぼします。
心血管疾患や糖尿病、関節症などは体力や快適さを奪いやすく、向精神薬や降圧剤などは性欲や勃起に影響することがあります。
加えて慢性的な痛みや疲労感があると、そもそも性行為への意欲が低下しやすくなります。
健康改善や薬の見直しで改善が期待できるケースも多いため、専門家への相談が有効です。
頻度が下がる主な原因
60代の性生活の頻度が下がる背景には、身体的な変化と心理・生活環境の両面が複雑に絡んでいます。
ここでは代表的な原因をわかりやすく解説し、何が対策の糸口になるかを示します。
加齢による性欲変化
年齢とともに性ホルモンの分泌が変化し、性欲そのものがゆっくりと低下することが多いです。
男性はテストステロンの減少でリビドーが下がり、女性はエストロゲンの変動が影響して性的興奮や潤滑に変化が出ます。
とはいえ個人差が大きく、年齢だけがすべてではありませんので、自己判断せず専門家に相談する余地があります。
更年期症状
更年期はホルモン変動に伴う多様な症状が現れ、性生活の頻度に大きく影響します。
| 主な症状 | 考えられる対処 |
|---|---|
| ホットフラッシュ 気分の落ち込み 膣の乾燥 |
ホルモン補充療法の検討 カウンセリングの受診 潤滑剤や局所治療 |
上の表は代表的な例で、症状の程度や適切な対処は個人によって異なります。
早めに婦人科や専門の医師に相談することで、つらさを和らげながら性生活の質を保てる可能性があります。
ED(勃起障害)
男性では勃起の維持が難しくなるEDが、性交頻度の低下に直結することが少なくありません。
原因には血管障害や神経障害、生活習慣病や薬の影響などがあり、多くは評価と治療で改善が期待できます。
恥ずかしいと感じて受診をためらう方もいますが、専門医に相談することで選べる治療法が広がります。
持病と薬の影響
高血圧や糖尿病などの持病、あるいはそれらの治療薬が性機能に影響を及ぼすことがあります。
- 高血圧治療薬
- 糖尿病
- 抗うつ薬
- 前立腺関連の治療薬
服薬が原因かどうかは医師と薬剤師が判断できますので、自己判断での中断は避けてください。
心理的距離
長年連れ添うほどに、会話や触れ合いが減って心理的距離が広がりやすくなります。
不満や誤解が積み重なると、性的な関心が薄れやすくなるため、関係性の見直しが重要です。
日常の小さなコミュニケーションを増やすだけでも、親密さは回復しやすくなります。
疲労・睡眠不足
体力の低下や慢性的な疲労、睡眠不足は性欲と行動力を削ぎます。
介護や仕事、家事の負担が続くと、気持ちの余裕がなくなり性生活の頻度が自然と落ちます。
まずは休息と睡眠の質を改善することが、性生活の回復につながる第一歩です。
頻度を保つための身体対策
年齢とともに性生活の頻度が変わるのは自然なことです。
しかし、日常の身体ケアで改善や維持が期待できる項目も多くあります。
運動習慣
定期的な運動は血流改善とホルモンバランスの維持に直結します。
特に有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが望ましいです。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- スクワットなどの下半身筋トレ
- 骨盤底筋トレーニング
- ストレッチと柔軟運動
週に合計で150分程度の中程度の有酸素運動を目安にしてみてください。
筋力トレは週2回程度を取り入れると、筋肉量の維持と疲労回復に役立ちます。
睡眠改善
良質な睡眠は性欲や性機能に大きな影響を与えます。
就寝時間と起床時間をできるだけ一定にし、睡眠のリズムを整えてください。
寝る前のカフェインや強い光の使用は避けると入眠しやすくなります。
日中の短い散歩や軽い運動で夜の眠りが深くなることもあります。
いびきや日中の強い眠気がある場合は睡眠時無呼吸症候群の検査を検討してください。
食事と栄養
栄養バランスの良い食事は全身の代謝と性ホルモンの基盤を支えます。
加工食品や過剰な糖質は控えめにし、良質なタンパク質と良脂肪を意識してください。
| 栄養素 | 期待される効果 |
|---|---|
| タンパク質 | 筋力維持 ホルモン合成の材料 |
| 亜鉛 | テストステロン維持 免疫機能サポート |
| ビタミンD | 骨格筋機能 ホルモン調整 |
| 良質な脂肪 | ホルモン材料 血管の柔軟性維持 |
必要に応じてサプリメントを補助的に利用することも一案ですが、まずは食事からの摂取を基本にしてください。
過度なダイエットや偏食は逆効果になりますので、栄養士や医師に相談するのが安心です。
ED治療
EDは治療で改善するケースが多く、放置せずに専門医を受診することを勧めます。
PDE5阻害薬(バイアグラなど)は安全性と効果が確認されており、医師の指導のもとで使用できます。
薬が合わない場合や効果が不十分な場合は、陰茎海綿体注射や陰茎プロストhesesなど他の選択肢もあります。
真空勃起補助具やカウンセリング併用で改善するケースもありますので、複合的な対応を検討してください。
パートナーと治療方針を共有すると心理的負担が軽くなります。
婦人科受診
女性側の悩みとして膣の乾燥や痛みが性生活の頻度低下につながることがあります。
局所的な潤滑剤や低用量エストロゲンの局所投与で症状が改善する場合もあります。
更年期による症状が強い場合はホルモン補充療法の適否を婦人科で相談してください。
骨盤底筋の機能低下が気になる場合は専門のリハビリや指導を受けると良い結果が期待できます。
薬の相談
高血圧薬や抗うつ薬など、一部の薬剤は性機能に影響を及ぼすことがあります。
服用中の薬が疑わしい場合は、自己判断で中止せずに主治医と相談してください。
薬の種類や用量を調整したり、代替薬に変更することで副作用が軽減されることがあります。
専門医と連携して、全身の健康と性生活の両方を考えた処方を目指してください。
日常でできる頻度維持の工夫
年齢を重ねても、日々の小さな工夫で性生活の頻度を保つことは十分に可能です。
ここでは無理なく続けられる具体的なアイデアを紹介します。
スケジュール共有
予定を共有するだけで、お互いの期待値を合わせやすくなります。
忙しさや体調を理由にすれ違いが起きやすい方には特に有効です。
- 週の目安を決める
- お互いの体調優先
- 事前の合図を作る
- カレンダーで可視化
カレンダーでは無理に詰め込まず、ゆとりを持った日程にしておくと続けやすいです。
スキンシップ習慣
セックスの頻度を上げるには、まず日常のスキンシップを増やすことが近道です。
朝のハグや寝る前の手つなぎなど、性的な期待をかけずに触れ合う習慣を取り入れてください。
短いマッサージや肩をさするだけでも、オキシトシンが分泌されて心の距離が縮まります。
スキンシップは回数ではなく、継続性が大切ですので、無理なく続けられる形を探しましょう。
デート計画
定期的なデートは恋人時代の感覚を取り戻す良い機会になります。
費用を抑えた散歩やカフェでの会話など、気軽に楽しめるプランを混ぜると良いです。
新しい体験は刺激になり、性生活への意欲を高めることが期待できます。
重要なのは義務にしないことと、お互いが楽しめることを優先する点です。
環境整備
部屋の雰囲気を整えるだけで、自然とムードが生まれます。
| 項目 | 工夫例 |
|---|---|
| 照明 | 間接照明の導入 調光機能の活用 |
| 寝具 | 快適なマットレスの選定 清潔なリネンの用意 |
| 音環境 | 静かな音楽の準備 外音を遮る工夫 |
| 温度湿度 | 適温の維持 加湿器の活用 |
匂いや清潔さも重要ですので、香りは強すぎないものを選んでください。
旅行・宿泊
非日常の時間は、自然と関係性をリフレッシュさせます。
短い温泉旅行やホテルの一泊は移動と気分転換を兼ねられますのでおすすめです。
移動が負担にならない範囲で計画し、休息を最優先にして過ごしてください。
プライバシーが確保できる宿を選ぶと、リラックス度が高まります。
ラブグッズ
ラブグッズは関係に新たな刺激を加えるツールとして役立ちます。
初めて使うときは、相手と事前に話し合い、用途や範囲を確認しておくと安心です。
衛生面の管理や使用方法の確認は必須ですので、説明書をよく読みましょう。
無理に高機能なものを選ばず、使いやすさと安全性を重視してください。
話し合いと相談の方法
性生活について話し合うときは、感情的にならずに状況を共有することが大切です。
互いの気持ちや身体の変化を確認し、解決策を一緒に検討する姿勢が関係改善につながります。
率直な会話
率直に話す準備を整えるだけで、相手の受け止め方が変わります。
タイミング選びも重要で、疲れているときや急いでいるときは避けた方が話が伝わりやすいです。
会話の目的を「改善したい」「理解し合いたい」などポジティブに伝えると誤解が生じにくくなります。
- 具体的な困りごとを挙げる
- 感情ではなく事実を話す
- 相手の意見を先に聞く
- 解決策を一緒に考える
非言語コミュニケーション
言葉だけでなく、触れ合いや視線が関係を温める役割を果たします。
手をつなぐ、肩に触れるといった小さなスキンシップを日常に取り入れてください。
ボディランゲージは安心感を伝え、会話のきっかけにもなります。
表情や声のトーンにも気を配ることで、誤解を避けやすくなります。
カップルカウンセリング
第三者の専門家を交えると、感情的な対立を避けつつ核心に触れやすくなります。
カウンセラーは傾聴と質問で双方のニーズを整理してくれます。
受診前に話したい点や希望するゴールをメモしておくと、時間を有効に使えます。
対面だけでなく、電話やオンラインで受けられる場合もあるため、通いやすさも確認してください。
医療機関での相談
身体的な原因が疑われる場合は、専門医への相談をためらわないことが重要です。
受診時には症状の経過、服用中の薬、既往症を整理して持参すると診察がスムーズになります。
秘密保持は医療の基本ですから、プライバシーの心配は相談時に確認してください。
| 診療科 | 主な対応 |
|---|---|
| 泌尿器科 | EDの検査 薬物療法の提案 |
| 婦人科 | 更年期症状の診断 ホルモン療法の検討 |
| 内科 | 持病の管理 薬の副作用確認 |
| 精神科・心療内科 | うつや不安の診断 カウンセリングと薬物療法 |
必要に応じて専門科を紹介してもらえるため、初診は総合的に相談できる医療機関を選ぶと安心です。
遠慮せずに悩みを伝え、適切な検査や治療方針を一緒に決めていきましょう。
今後の性生活設計
性生活の設計は年齢や体調を踏まえ、無理のない目標を立てることが第一です。
週や月の頻度を目安にしつつ、疲労や体調変化を考慮して柔軟に調整することをおすすめします。
具体的には二人で話し合い、優先順位を決め、無理のないスケジュールを作ると安心です。
健康面では定期検診や婦人科、泌尿器科での相談を受け、薬や治療の影響を確認してください。
日常的なスキンシップやデート、睡眠や運動の改善を取り入れると、自然と親密さが高まります。
迷いや不安が続く場合はカップルカウンセリングや医療機関で相談することが有効です。
計画は固定せず、定期的に見直して二人にとって心地よい性生活を作っていきましょう。



